ファシリテーターは中立!で、中立って何?
2026/03/23
前回は会議の事前準備の大切さをお伝えしました。
会議は会議前から始まっている、そのためにはさまざまな準備が必要だということでしたね。
そしてなにより、事前のイメージトレーニングも必要ですよ。
さて、今回は「ファシリテーターの中立性」ということについてお伝えします。
これはよく聞くことなのですが、具体的になにをどうすれば「中立性」が保てるのか。
このことについてお伝えしていきいましょう。
【中立だから何もしない、ではないんです】
ファシリテーターは中立を保つ。
だからよく誤解されてしまうのが
「中立だから何も意見は言いません」
と思いこんでしまうことです。
実は中立性とは「意見を言わない、意見を持たない」ということじゃないんです。
じゃぁ、どういうことが中立なのか?
そもそもファシリテーターは「議論の中身(コンテンツ)」ではなく「議論の進め方(プロセス)」に責任を保つ役目です。
話し合いの結論に対しては参加者が決めることです。
「だから意見は持っちゃいけないんでしょ?」
うーん、ちょっと違うんですよ。
プロセスに責任を持つからこそ、一人ひとりの意見に対して次のようなことに意識を向ける必要があるんです。
・偏りなく全員がまんべんなく発言できているか
・今の意見は論点がずれていないか
・議論が浅いところで終わらず、深まっているか
つまり「意見を持たない」ではなく「偏らない形で関わる」ことが真の中立性なんです。
そのためには「一人ひとりの意見に対して意見を持つ」ことが必要になるんですね。
【そもそもどうして中立性が重要なの?】
ではファシリテーターはそもそもどうして中立性を保つ必要があるのか。
それには3つの理由があります。
1.プロセスとコンテンツの分離
これは先ほどお伝えした通り、ファシリテーターは会議の「プロセス」に責任保つ役割です。
そのため、議論の中身と進め方を切り分けて考える必要があります。
ファシリテーターが議論の中身であるコンテンツに入りすぎると、ファシリテーターが「当事者」になっちゃいます。
そうなると、どうしてもファシリテーターは自分の意見に有利な方向に会議を進めがちになります。
これだとプロセスがきちんと保てなくなってしまいますよね。
2.心理的安全性を保つ
会議の場は安心安全に意見を言えるようにしないといけません。
そうでないと、全員が公平に意見を言えなくなってしまいます。
ファシリテーターが中立的な立場、つまり意見の内容に対しての評価を行わない立場であれば、安心して発言できますよね。
これが意見を言った途端、ファシリテーターが「いや、それは間違っていますよ」なんて言ってしまうと、発言意欲はなくなってしまいます。
ただし、論点がズレている意見についてはきちんと伝える必要があります。
「今の発言は会議の目的、目標からズレていますので、また別の機会に取り上げることにしましょう」
という感じです。
これも「無関係なことも言っていいんだ」なんていう無法地帯になることを防ぐために必要なことなんです。
3.権威バイアスや同調圧力を防ぐ
組織の中では、偉い人の意見に引っ張られる「権威バイアス」や周りに意見に合わせる「同調圧力」というのが働いてしまいます。
しかし、これでは意思決定の質が下がってしまいます。
だからたとえ偉い人の意見であっても、大多数の人の意見であっても、同じ一つの意見として取り扱う必要があるのです。
そのため、ファシリテーターがどの意見も公平に取り扱う「中立性」が必要となるんです。
そうすることで、たとえ新人の意見でも、少数的な意見でも、良い質の意見が採用されるということだってあり得る会議になります。
これにより意思決定の質を上げることが可能になるんです。
【どんなときに中立性が崩れるのか】
逆に、中立性が崩れてしまいがちになるパターンも知っておきましょう。
これを知っておけば、中立を崩す前の予防線を張ることができます。
1.結論を急ぎすぎる
ファシリテーターが時間を意識しすぎて、早く結論を出そうとしてしまうと、中立性を保てなくなりがちです。
めんどくさいから多数決で決めてしまおう。
ファシリテーターが考えている方向で結論を出してしまおう。
なんてことが頭をよぎってしまうんですよ。
2.声の大きな人に引っ張られる
ファシリテーターも人間ですから、どうしても会議の場で声の大きな人に意見に気持ちが傾いてしまうことがあります。
その結果、声の大きな人の意見、発言量の多い人の意見を採用しがちになるんです。
これ、無意識にやってしまいがちなので、ファシリテーターは要注意ですよ。
3.沈黙に恐れてしまう
会議の場でファシリテーターが恐れてしまうのが「沈黙」です。
何も意見が出てこない、それが不安となってしまう。
その結果、無理に意見を引き出そうとして
「例えば、こんな感じの意見でいいんですよ」
なんて感じで自分の考えを表にだしてしまう。
これをやってしまうと、ファシリテーターが「声の大きな人」になってしまい、その意見に場が引っ張られてしまうことがあります。
【中立性を保つためのスキル】
ではどうすれば中立性を保つことができるのか。
ここではすぐに使える5つのスキルをご紹介します。
1.意見を要約する
ファシリテーターは出された意見を一度「要約」して板書することが多いでしょう。
この「要約」を行う時に、出された意見を自分の考えを抜きにして、事実を短くまとめるようにするんです。
そうすることで、意見が整理されて議論がクリアになります。
2.意見を可視化する
要約したら次にやることは「意見の可視化」です。
ホワイトボードに意見を書くことで、客観的に意見を見ることができます。
これはファシリテーターだけでなく参加者も意見の偏りを確認することができるので、中立性を保ちやすくなります。
3.均等に発言してもらう
会議の参加者全員に、均等に発言をしてもらうようにしましょう。
そうすることで、声の大きさを均等化することができます。
特に発言をしていない人をチェックし、こちらから積極的に問いかけてみるというのもいいですよ。
具体的なやり方は、以前の記事
「会議で発言を促す魔法の秘術」
で紹介していますのでこちらも参照して下さい。
4.視点を変える問いかけをする
中立性というのは、視点の偏りに対しても意識をする必要があります。
「あ、今全体的に視点が偏っているな」
と思ったら
「別の視点や考え方はありませんか?」
という問い掛けを遠慮なくおこなってみましょう。
5.メタ視点を持つ
メタ視点とは、上から全体を見下ろすような視点のこと。
会議の今の状況を言語化することでそれを行うことができます。
「今、議論が広がっていますね」
「ちょっと議論が一方向に詰まりすぎていますね」
このような発言が会議の中立性を保つことにつながっていきます。
【どうしても意見が言いたければ】
ファシリテーターとはいえ、会議の中身に対して意見が言いたくなることもあるでしょう。
けれど、ファシリテーターはコンテンツには介入しない。
だから意見を言ってはいけない、と思い込んでいませんか?
実はやり方次第で、中立性を保ちながらもきちんと意見を言うことができます。
そのコツを3つご紹介します。
1.発言は最後に行う
ファシリテーターとして意見を言いたい場合、発言は全員が発言し終わって最後に行うようにしましょう。
「一通り意見が出揃ったので、私からも一言いいでしょうか?」
と、場に断りを入れてから発言します。
これは、途中で意見を言ってしまうと、場はどうしてもファシリテーターの意見に引っ張られてしまう危険性があるからです。
そうなると、場の中立性が保てなくなりますからね。
2.Iメッセージで伝える
Iメッセージとは「私はこう思います」という言い方です。
あくまでも自分の一意見として述べさせてもらう、というスタンスを崩さないようにして下さい。
「これはこうするべきではないでしょうか?」
だと決めつけの言い方になります。
「私はこれはこうするほうが良いと考えます」
というような発言だと、たくさんの中の一つの意見として取り上げることができます。
3.自分で発言して自分で板書する
当然ながら、ファシリテーターの意見も他の意見と同様に板書を行って下さい。
あくまでもたくさん出た意見の中の一つとして、並列して書き出すということをお忘れなく。
そして発言し終わったら、すぐにファシリテーターとしての役目に戻る。
その意識をしっかりとつけていきましょう。
【会議を指導した現場の声】
私が実際に、会議のやり方を指導したとある企業では、こんな変化が起きています。
今まで社長が独断的に会議を進行していたので、結論は社長が社長が思ったことがそのまま採用されるという事がほとんどでした。
そのため、会議の場で意見を言うこと自体、意味がないという雰囲気になっていたんです。
そこでファシリテーションを導入し、最初は私がお手本を見せて会議を進行。
このときに「ファシリテーターの中立性」について具体的に指導をしました。
そうして徐々に社長ではなく、幹部社員に交代でファシリテーターを行ってもらうようにしたのです。
その結果、会議での発言量が格段に増えました。
また、社長の意見が即採用されるのではなく、社長の意見に対しても意見が出てくるようになったのです。
そうして議論の質がどんどん高まっていきました。
また副次的な成果として、会議の時間が短くなったのです。
今までは途中で社長の「独演会」が始まり、それが会議の脱線になっていたのを防ぐことにもつながりました。
ファシリテーターが中立性を保ち会議で出された意見を平滑化して取り扱うようになることで、安心安全に意見を出せる場に生まれ変わったんですね。
【中立性を保つと組織が変化する】
ファシリテーターの中立性を保つことで、組織の雰囲気も変わっていきます。
今まで言えなかった意見が言えるようになった。
意思決定のスピードが速くなった。
会議での全員の納得度が高くなった。
などなど。
たかが会議、されど会議なんです。
私は会議の場というのは、組織の縮図だと思っています。
自由に意見が言える会議だと、その組織は一人ひとりが自由に考えて動いていて、活気があると感じています。
逆に会議の場で自由に意見が言えない組織だと、上からの押しつけが強くて下がストレスを感じて仕事をしている、とても窮屈な感じに見えます。
だから会議の場でのファシリテーターの中立性というのは、組織を変えるためにもとても重要な役割を担っているんです。
たかが中立性と思わないで下さい。
その中立性が、会議の雰囲気を変え、さらには組織の風土まで変えてしまうことにつながるのですから。
ファシリテーターって、単なる会議の仕切りやさんではない。
組織風土まで変化させてしまう、大きな役割もになっているということをお忘れなく。
そのためには、ファシリテーターの中立性はとても重要な要素になるのです。
【さいごに】
ファシリテーターが中立性を保つというのは、特別な才能は必要ありません。
問題はその「関わり方」にたいしてどれだけ意識を向けるかです。
そもそも完璧なファシリテーターなんて一人もいません。
まずは今回お伝えした事の中の一つを意識してみるといいでしょう。
そうすることで、会議の質が少し変わったな、と実感できることでしょう。
組織の変革というのは、こういった些細な変化から始まるのです。
その一歩を担う意味で、ファシリテーターの中立性をしっかりと意識をして会議に臨んでいきましょう。
さて、中立性は保つことができました。
けれど、ここでまた悩むことが。
「どうすれば上手に板書することができるの?」
これ、ファシリテーターをやり始めた人に多い悩みです。
実はここにもちょっとした秘訣があります
「早くわかりやすく板書する」ためのマル秘テクニックを次回はご紹介します
どんなテクニックがでてくるのか、乞うご期待!
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