ファシリテーターを育成するにはこれしかない!
2026/06/02
少し前のことですが、ある企業の管理職研修でこんな相談を受けました。
「会議を活性化したいのですが、うまく進行できる人がいないんです」
詳しく話を聞いてみると、司会をする人はいるそうです。
しかし、参加者の意見を引き出したり、議論を整理したりする人がいないとのことでした。
私はこの話を聞いて、「なるほど」と思いました。
実はこれは、その会社だけの悩みではないからです。
これまで数多くの企業に関わってきましたが、同じような相談を何度も受けてきました。
あなたの職場ではどうでしょうか?
会議は開催している、議事録も作成している。
それなのに参加者からは「また会議か」という声が聞こえてくる。
そんな経験はありませんか。
会議が終わった後に、
「結局何が決まったのだろう」
「また次回に持ち越しか」
そんな会話が聞こえてくることもあります。
一方で、
「今日は有意義だった」
「やるべきことが明確になった」
という会議もあります。
同じ会議です、同じように時間を使っています。
それなのに結果は大きく違います。
なぜなのでしょうか。
さて、ここで考えてみたいのは、「会議を変える人」の存在です。
議題の違いもあるでしょう。
参加者の違いもあるでしょう。
しかし、それ以上に大きな要因があります。
それがファシリテーターです。
場を整える人です。
参加者同士をつなぐ人です。
対話を生み出す人です。
私はこれまで数多くの会議を見てきました。
その中で確信していることがあります。
優秀なファシリテーターがいる組織は強いということです。
そして変化に強いということです。
ところが、そのファシリテーターが不足している企業は少なくありません。
もっと言えば、育成方法がわからない企業も多いのです。
だからこそ今回のテーマがあります。
「ファシリテーターを育成するにはこれしかない!」です。
実はファシリテーター育成には近道がありません。
魔法のような方法もありません。
しかし、確実に育つ方法はあります。
今日はそのことについてお話ししたいと思います。
【ファシリテーターを育成する意味】
まず考えてみたいのは、なぜファシリテーターを育成する必要があるのかということです。
会議の司会ができる人がいれば十分ではないか。
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに会議を時間通りに進めるだけなら、それでも成立します。
議題を読み上げる。
発表者を指名する。
最後に閉会を宣言する。
しかし、それは会議を終わらせているだけであって、会議を活かしているとは限りません。
私は研修の中でよく参加者の皆さんにこんな質問をします。
「会議の目的は何ですか?」
すると、
「情報共有です」「問題解決です」「意思決定です」
という答えが返ってきます。
どれも正解です。
しかし、本当に大切なのは、その目的を参加者全員で実現することです。
ところが実際には、一部の人だけが話し、多くの人が聞いているだけの会議になっていることがあります。
私も若い頃はそうでした。
一生懸命会議を進めているつもりでした。
ところが録画を見返してみると、自分ばかりが話していたのです。
参加者の意見を引き出しているつもりが、実際には自分の考えを説明していただけでした。
今振り返ると、とても恥ずかしい話です。
しかし、この経験があったからこそわかったことがあります。
会議の価値は、ファシリテーターが何を話したかではなく、参加者がどれだけ考えたかで決まるということです。
人は物語で動く生き物です。
自分が考えたことには責任を持ちます。
自分が発言したことには愛着を持ちます。
自分が決めたことには行動しようとします。
反対に、誰かに言われただけのことは、なかなか続きません。
だからこそ参加者を主役にする必要があります。
ファシリテーターは会議の主役ではありません。
参加者を主役にする黒子なのです。
また、別の話ですが、ある製造業の会社で改善会議を見学させていただきました。
管理職の方が一生懸命話をされていました。
説明も上手でした。
資料もよくできていました。
ところが会議が終わるまで、若手社員は一言も発言しなかったのです。
休憩時間になって若手社員に話を聞くと、実は改善案をたくさん持っていました。
「だったら会議で言えばよかったじゃないですか」と聞くと、
「言うタイミングがなかったんです」
という答えが返ってきました。
私はこの言葉を今でも覚えています。
意見がなかったのではありません。
言う場がなかったのです。
これは非常にもったいないことです。
なぜなら、その会社はせっかく現場の知恵を持っていたにもかかわらず、それを活かせていなかったからです。
ファシリテーターの役割は、こうした埋もれている知恵を引き出すことです。
だから私は、ファシリテーター育成は単なる会議改善ではないと思っています。
組織の知恵を活かす取り組みです。
人材育成そのものです。
そして組織文化を育てる取り組みなのです。
【なぜ今、ファシリテーターが求められているのか】
私が研修講師になった二十数年前と比べると、組織を取り巻く環境は大きく変わりました。
昔は経験豊富な上司が答えを持っていました。
その答えを部下に伝えることで組織は動いていました。
しかし今は違います。
変化が早すぎるのです。
昨日の正解が今日の正解とは限りません。
他社の成功事例が自社で通用するとも限りません。
だからこそ、一人で考える時代から、みんなで考える時代へと変わってきています。
そして、その中心にいるのがファシリテーターなのです。
【なぜファシリテーターは育ちにくいのか】
では、ここで一つ考えてみたいことがあります。
なぜファシリテーターは育ちにくいのでしょうか。
実は理由はとてもシンプルです。
ファシリテーションは知識ではなく技術だからです。
例えば、自転車の乗り方を本で学ぶことはできます。
しかし、本を読んだだけで乗れるようにはなりません。
実際に乗ってみて、転んで、また挑戦して、その繰り返しの中で身についていきます。
ファシリテーションもまったく同じです。
質問技法を学ぶことはできます。
会議の進め方を学ぶこともできます。
しかし、沈黙した時にどうするのか。
議論が脱線した時にどうするのか。
意見が対立した時にどうするのか。
これは実践しなければ身につきません。
私は研修の中でロールプレイを行うことがあります。
参加者の皆さんは最初、とても緊張されています。
しかし実際にやってみると、教科書通りには進まないことに気づきます。
そこから本当の学びが始まるのです。
そんな時、私がよく伝えているのは、
「研修で育てるのではなく、現場で育てる」
という考え方です。
研修はスタート地点です。
本当の育成は現場で始まります。
だからこそ、失敗できる場が必要なのです。
小さな会議でも構いません。
朝礼でも構いません。
まずは経験することです。
そこからしか成長は始まりません。
【具体的な育成ステップ】
では具体的にどのように育成すればよいのでしょうか。
私がおすすめしているのは五つのステップです。
1.見本を見る
優秀なファシリテーターを観察します。
何を話しているのかではありません。
どう場をつくっているのかを見るのです。
質問のタイミング、板書の仕方、参加者への関わり方。
そうした細かな工夫の積み重ねが学びになります。
2.小さな場で実践する
いきなり大きな会議を任せる必要はありません。
少人数のミーティングから始めれば十分です。
成功体験を積み重ねることが大切です。
3.振り返り
会議が終わったら必ず振り返ります。
何がうまくいったのか。
何が課題だったのか。
ここを曖昧にすると成長は止まります。
4.フィードバック
自分一人では気づけないことがあります。
参加者や上司から感想をもらうことで新しい発見があります。
特に参加者の声は貴重です。
5.場数を踏む
結局のところ経験に勝る教材はありません。
上手なファシリテーターほど、多くの場を経験しています。
これは間違いありません。
【育成担当者がやりがちな失敗】
ここで育成担当者にお伝えしたいことがあります。
それは完璧を求めすぎないことです。
初めてファシリテーションを担当した人に対して、
「あそこがダメだった」
「もっとこうすべきだった」
と改善点ばかり伝えてしまうことがあります。
もちろん改善点は必要です。
しかし、それ以上に大切なのは成功体験です。
人は認められることで成長します。
自信が生まれるからです。
私自身も若い頃は失敗ばかりでした。
質問をしても誰も答えてくれない。
沈黙が怖くて自分で話してしまう。
そんな経験を何度もしてきました。
それでも続けられたのは、周囲の方が良いところを見つけてくれたからです。
「今の質問は良かったね」
「参加者の話をしっかり聴いていたね」
そんな一言が励みになりました。
育成担当者の役割は、欠点探しではありません。
成長の芽を見つけることです。
その視点を忘れないでいただきたいと思います。
【育成が進む組織の共通点】
ファシリテーター育成がうまくいく組織には共通点があります。
それは失敗を許容する文化です。
失敗を責める組織では誰も挑戦しなくなります。
結果として、いつも同じ人が会議を進行するようになります。
そして組織の成長も止まってしまいます。
一方で、「まずやってみよう」という文化がある組織では違います。
若手社員も挑戦します、中堅社員も挑戦します、管理職も学び続けます。
その結果、多くのファシリテーターが育っていきます。
私はこれまで多くの企業を見てきましたが、育成がうまくいく会社には必ずこの文化があります。
挑戦を歓迎する文化です。
【実際のファシリテーター育成の場面】
以前、ある製造業の企業でファシリテーター育成プロジェクトを行いました。
その会社では管理職が一方的に話す会議が当たり前になっていました。
若手社員はほとんど発言しません。
意見を持っていても言わない。
そんな状態でした。
そこで若手社員にも順番にファシリテーターを担当してもらうことにしました。
最初はうまくいきませんでした。
沈黙もありましたし、議論が止まることもありました。
しかし毎回振り返りを行いました。
良かった点を共有しまし、改善点も一緒に考えました。
その繰り返しを半年続けました。
すると大きな変化が起きました。
若手社員から意見が出るようになったのです。
管理職も驚いていました。
「こんな考えを持っていたのか」
という声が聞こえてきました。
育ったのはファシリテーターだけではありません。
組織全体の対話力が向上したのです。
私はこの変化を目の当たりにして、改めてファシリテーター育成の価値を実感しました。
【目指す世界】
私が本当に目指しているのは、ファシリテーターを増やすことではありません。
対話できる組織を増やすことです。
会議とは単なる情報共有の場ではありません。
人と人がつながる場です。
知恵を出し合う場です。
未来を創る場です。
優秀なファシリテーターが一人育つと、その周囲の人たちも変わります。
やがて組織文化が変わります。
そして会社そのものが変わっていきます。
見えない関係性が、組織の空気をつくります。
その空気を良くするのがファシリテーションです。
だから私は、この仕事に大きな可能性を感じているのです。
【おわりに】
ここまで、「ファシリテーターを育成するにはこれしかない!」というテーマでお話してきました。
結論はとてもシンプルです。
ファシリテーターは教えるだけでは育ちません。
実践すること、振り返ること、改善すること、そしてまた挑戦すること。
その繰り返しの中で育っていきます。
人は物語で動く生き物です。
そしてファシリテーターは、その物語を紡ぐ存在でもあります。
会議の場で参加者の力を引き出す。
組織の知恵を引き出す、そして未来をつくる。
そんな人材が一人増えるだけで、組織は大きく変わり始めます。
さて、ここで次の疑問が浮かびます。
「ファシリテーターに向いている人とは、どんな人なのだろう?」
ということです。
実は、多くの方が思い描くリーダータイプが、必ずしも優秀なファシリテーターになるとは限りません。
反対に、「まさかこの人が?」と思うような方が素晴らしいファシリテーターになることもあります。
ということで次回は、「ファシリテーターに向いている人、向いていない人」ということについてお伝えします。
意外な適性や、ファシリテーターに必要な資質についてお話ししていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。
次回も乞うご期待!
----------------------------------------------------------------------
ユーアンドミークリエイト株式会社
〒883-0021
宮崎県日向市財光寺1460
電話番号 : 080-3503-8297
FAX番号 : 0982-54-4936
宮崎を拠点に中小企業の支援を
宮崎でファシリテーション向上も
----------------------------------------------------------------------

