あなたはどっち?ファシリテーターに向いている人、向いていない人
2026/06/11
前回はファシリテーターの育成についてお伝えしました。
結論は「習うより慣れろ!」、教えることよりも場数を踏ませたほうが早く上達する、ということでした。
とにかく挑戦を繰り返すことが、育成にとっては大事なんですよね。
とはいえ、育成しているとわかります。
「あ、この人はファシリテーターに向いているな」
「この人、ファシリテーターにしないほうがいいかもしれない」
なんていうことが。
いくらファシリテーションの勉強をしても、すぐにうまくやれる人とそうでない人がいるんですよ。
実はこれ、学習の習熟度とかではないんです。
もともと持っているあるものが違うんです。
ではファシリテーターに向いている人、向いていない人ってどんな違いがあると思いますか?
そしてあなたはどっちなのでしょうか?
その違いを今回はご紹介していきます。
【そもそもファシリテーターの素質とは?】
ファシリテーターの素質、これを知っておくことで向いているか、向いていないかがわかります。
ではこの素質ってなんなのでしょうね?
まず、ファシリテーターって何をする人なのか、ここを考えれば必要な素質は見えてきます。
まぁ一言で言えば「場の力を最大限に引き出し結論へと導く、引き出す力」。
これがファシリテーターに必要な素質です。
逆を言えば「俺についてこい!」的な力は不要、いやジャマになるだけです。
具体的にはこんな素質が必要になります。
1.心理的安全性をつくる包容力
どんな意見でも大丈夫、まずは受け止めてくれる、そんな安心感が必要です。
また、相手が偉い人だろうが、新米のペーペーだろうが、同じ姿勢で臨んでくれることも大事です。
そうすることで、安心安全な場作りができるのです。
2.言葉の裏を読むメタ認知力
言葉そのものを受け止めるのではなく、その発言の背景にあるもの、そのときの発言者の気持ち、感情までも理解する力が必要です。
そうすることで、議論に感情移入することなく「今、何が起きているのか?」ということを上空から見下ろすような客観しすることができます。
これをメタ認知といいます。
3.発言の論点を見出す論理的思考
バラバラになっている発言から、意見の共通点は対立点などを見出し、論理的につなげていく事が求められています。
また、発言を短い言葉で要約して可視化していく力も必要とされます。
4.変化を恐れない柔軟性
せっかく作成したアジェンダだけれど、会議は思った通りに進まないものです。
こういうときに臨機応変に変化をさせ、柔軟な対応が求められます。
また、意見の対立や沈黙に耐えて、ここが変換点だと捉える力も必要になります。
【ファシリテーターに向く人、向かない人の違い】
以上を踏まえたうえで、具体的にどんな人がファシリテーターに向いているのか、向いていないのかを比較しながらお伝えしていきましょう。
1.黒子に徹する vs 自己主張が強い
ファシリテーターに向いている人は、自分が主役になるのではなくあくまでも裏方、黒子に徹します。
そして会議の参加者が喜んで意見を出す、ここに喜びを感じられるような人です。
それに対して向いていない人は、自分のやり方や考えに固執をして無理やりその方向に引っ張ろうとします。
特に承認欲求が高い人は、周りからほめてもらいたくて上手に立ち振る舞おうとしてしまい、自分のやり方を押し通そうとする傾向があります。
2.高い傾聴力 vs 意見をジャッジ
向いている人は人の意見を、そのまま素直にきちんと受け止めてくれます。
「なるほど、そういう意見なのですね」という感じで、意見の内容に対して判定をせずにそれをそのまま意見として取り上げることを行います。
向いていない人は、意見を聞いて「いや、それは違うと思うぞ」なんて感じで自分の尺度でジャッジをしてしまいがちです。
また、その場で善悪の判断をして、せっかく出された意見を議事録に残さないなんていうこともやってしまいます。
3.中立的で公平 vs 思い込みが激しい
ファシリテーターの立ち位置として「中立性を保つ」というものがあります。
これは自分の考えや感情、役職や立場などに左右されず、全てをフラットに受け止めることが必要となります。
それができる人こそ、ファシリテーターに向いていると言えるでしょう。
逆に向いていない人は、自分の先入観で相手を見てしまい「どうせこの程度の意見しか出ないだろう」なんて思いで意見を聞いてしまいます。
逆に「この人の意見は立派だから聞き逃さないようにしなきゃ」なんて感じで、相手によってコロコロと態度を変えることも。
4.論理的かつ柔軟 vs 感情的かつ頭が固い
向いている人は意見を論理的に組み立てたり分解したりして、意見を上手に構造化してくれます。
さらにそこから自分が立てたアジェンダにこだわらずに、臨機応変に進行の方法や仕組みを変えることも行ってくれます。
向いていない人は、人の意見で自分の感情が左右されて好き嫌いで採用の可否を決めがちです。
さらに、頭が固いので事前に準備したアジェンダ通りに進めようとして、その場で何が起きているのかに目を向けないことも多いです。
5.じっと待てる vs せっかちで待てない
ファシリテーターに向いている人は、会議で沈黙が起きても「これは意見を考えているのだ」と捉えてじっと待つことができます。
そのくらいの心の余裕を持っているということです。
向いていない人はせっかちで「ほら、何か意見出してよ」と参加者になんとかして早く意見を出させようとしてしまいます。
これは参加者の思考を邪魔するだけなのです。
6.時間管理ができる vs 行き当たりばったり
向いている人は時間管理をしっかりと行ってくれます。
事前作成したアジェンダ通りに進めるだけでなく、臨機応変に変更した場合もタイムスケジュールをその場で考えて、時間内に終わらせるようにしてくれます。
向いていない人は、変更などを行っても行き当たりばったり。
その結果、時間が足りなくなり何も決まらなかったというようなこともありえます。
【向いていない人を変えるために】
あ〜、これで見ると私ってファシリテーターに向いていないわ。
なんて悲観しないで下さい。
「でも、自分の性格なんて簡単には変えられないし」
確かに、性格を変えるのは容易ではありません。
しかし、向いている/向いていないって正確の問題じゃないんです。
実は「型を変える」だけでいいんです。
ファシリテーターに向く人になるための型を変えるステップをご紹介しましょう。
ステップ1 マインドセットを書き換える
まずはファシリテーターの目的、これをしっかりと理解しましょう。
大事なのは「会議をきれいにまとめること」ではなく「みんなの意見を集約して合意形成を促すこと」です。
そのためには
・「話す」から「聴く」「書く」ことに意識を向ける
・意見をジャッジするのではなく受け止める
ことが大事です
まずはそのための訓練を行ってみましょう。
ステップ2 伴走役をつける
ファシリテーターを一人でやってしまおうとするから、いつもの自分のやり方に戻ってしまうのです。
だから伴走役をつけて、まずはサブファシリテーターからスタートしてみましょう。
サブファシリテーターは板書役やタイムキーパーなどを行います。
そうして徐々に上手な人の場の空気に慣れさせるのです。
慣れてきたらメインファシリテーターをやってみましょう。
このときに伴走役のサブファシリテーターは「困ったらいつでも自分が代わるからね」と伝えておき、心理的なプレッシャーを和らげてあげましょう。
ステップ3 テンプレートで対処する
ファシリテーターは臨機応変な対応が必要、とはいってもある程度の「型」も必要です。
というか、慣れているファシリテーターは「自分の型」を持っています。
だから、それをテンプレート化するのです。
例えば、板書については書き方のルールを決めておく。
質問の深堀りをするときには「具体的には?」、意見を拡散するときには「他に意見はありますか?」などの台詞を決めておく、など。
こういったテンプレートは、慣れた先輩ファシリテーターから盗むといいですよ。
これはステップ2のときにしっかりと見て学んでみましょう。
ステップ4 フィードバックをもらう
一人でファシリテーターをやっていると、自分のやり方の何が良くて何が悪いのかが見えてきません。
だから周りからのフィードバックをもらいましょう。
また、ファシリテーターとしての振る舞いを録画しておき、あとから見直すのもいいでしょう。
そうすることで、自分の強みを伸ばし、弱みをどのように克服すればいいのかが見えてきますよ。
【ファシリテーター向きに変わった事例】
私も今までたくさんの人にファシリテーション指導を行ってきました。
その中で、組織内ファシリテーターの育成を依頼された事例をご紹介しましょう。
ここでは数名の経営幹部が、幹部会議でのファシリテーターを持ち回りで行うことになっていました。
けれど、今までは行き当たりばったりで時間も大幅にオーバーするし、議論がまとまらないことも多く、最後は社長の鶴の一声で決着が着くという状況でした。
まずは私がお手本を見せて、そこから持ち回りで幹部の方にファシリテーターを行い、私がフィードバックをするというやり方で指導をしました。
しかし、その中の一人がどう考えてもファシリテーター向きじゃなかったんです。
そこで、セリフのテンプレートを作成しました。
また、その場で出された意見をジャッジせず、オウム返しで復唱することを意識してもらいました。
何度か指導を重ねた結果、1年後には他の人に負けないくらいの立派なファシリテーターに育ちました。
やる気と明確な手順さえあれば、不向きだと思う人でもファシリテーターになれるものなのですよ。
【最後はやる気】
ここまでファシリテーターに向いている人、向いていない人の違いをお伝えしてきました。
また、どうすれば向いている人になれるかもご紹介しました。
できれば多くの人に、ファシリテーターに向いているという特性を持ってもらいたいと思っています。
しかしそう簡単には自分を変えることはできません。
あなたが本気でファシリテーターになりたい、そう思うのであれば最後は「やる気」があるかどうかにかかっています。
その気になれば、どんなことだって克服できます。
また、自分が弱みだと思っていることでもそれを逆に武器にして、独特のファシリテーションスタイルをつくることだってできます。
そもそも、絶対的な正しいファシリテーションのやり方なんて存在しません。
10人いれば10通り、100人いれば100通りのやり方があるのがこの世界なのです。
とはいえ、より良いやり方は存在します。
それを意識して、自分を少しずつより良い方向に変えていく。
これができる人が、本当の意味での「ファシリテーターに向いている人」ではないかと私は思っています。
【おわりに】
どんな世界にも「センス」というものがあります。
特に形のないものを扱う場合には、各自のセンスが問われるものです。
このセンス、生まれつき持っている性格なども影響するでしょう。
しかし、訓練次第ではいかようにもなるものです。
あとは本人がそうなりたいという、強い思いを持つこと。
これが大事なのです。
ということで、あなたも自分の持っているものを活かして、とびきり素敵なファシリテーターを目指してみましょう。
ファシリテーターシリーズは今回で一旦終了します。
次回からは研修講師シリーズをお送りします。
これは私が23年間培ったノウハウや心がけていることなどをあらためてお伝えします。
まずは「講師たるもののスタイル」についてです。
乞うご期待!
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